ITエグゼクティブ・フォーラム IT JAPAN 2013 Vol.24

日本NCR 代表取締役社長 兼 CEO 諸星 俊男氏


タイトルは「「顧客体験」の変革がオムニチャネル時代を勝ち抜く鍵」です。


諸星社長がまず語ったのは日本NCRという会社についてでした。
同社は、1920年創立、今年で93年の歴史がある会社で、
米国系の外資系企業では最長の歴史のある会社だと紹介しました。


しかしながら日本NCR社は、現在一般的に言われている外資系の会社とはかなり隔たりがあり、
どちらかというと日本的な体質の会社であるとの説明でした。


NCRは、旧社名の頭文字で「National Cash Register」というように
もともとはキャッシュレジスターのメーカーであったそうで、
中でもセルフレジのシェアは日本で7割をしめているとのことです。


しかし、私にはこの7割というシェアがピンときませんでした。
なぜなら私が利用しているスーパーではまだセルフレジを見かけたことが無いからです。

「新しい顧客体験」という動画


ここでスクリーンに「新しい顧客体験」という動画が映し出されました。
この動画の中での消費者の体験はまさにこうなったら良いなという
事がスムーズに流れるように行われて行くのです。
顧客にとって便利で快適でお得で…といった体験を次々として行きます。


しかし私はこの動画を見ていて違和感を覚えました。このアニメーションの随所にレトロな感じがしたからです。
そしてその疑問は諸星社長の「この動画は何年前に作られた物でしょうか?」
という問いかけが行われたとき腑に落ちたました。
そうです。このアニメーション動画は20年前に作られたものだったのです。



同社は20年前から、間違いなく今の未来を思い描き、それを戦略としてきているのだと感じました。

オムニチャネルとは


この講演のタイトルにあるオムニチャネルとは、技術の確認により消費者行動も多様化する中
実店舗、ウェブサイト、ソーシャルメディア、ダイレクトメール、携帯、モバイルデバイス等の
消費者と企業を結ぶ多種多様な販売チャネルのことを指します。


そういった顧客からのアプローチに対して、企業側はまだ十分な対応ができているとは
言えない状況で、これからはオムニチャネルに対してシームレスな対応が必要になると言っています。

顧客体験を提供する側と受ける側のギャップは拡大


消費者は費やす労力の割には、それに見合うサービスを受けていないと思っていて
顧客体験を提供する側と受ける側のギャップは拡大しているというのです。


具体的には、「行列に並ばせないでほしい」「私の欲しい物をいつでもどこでも簡単に見つけられるように」
「私のロイヤリティに応えてほしい」といった消費者側の要求に対して
企業側の論理は「低コストを維持しつつ成長を加速」「従来のシステムと新システムを統合」
「高セキュリティ、法令順守」「取引エラーのリスク削減」といったように深い隔たりがあるのです。


この結果として消費者が感じていることは、日常的に時間が足りないと感じているが70%で
、より良い顧客体験には多くのお金を払っても良いと感じているが86%で、残念な顧客体験を
した後は同業他社に切り替えても良いと思っているが89%にもなるのです。

「簡便さ」と「顧客体験の改善」をどう実現するか


そして諸星社長は、「簡便さ」と「顧客体験の改善」をどう実現するかについてこう答えています。
まず、簡便さについては、ITリテラシーの高い消費者や多くのリピーターは必ずしも対面サービス
を求めてなく、自分で行うセルフサービスを選ぶ消費者も増加していると説き、セルフサービス
システムやセルフサービスとスマートデバイスとの連動させることを提示している。


また、「顧客体験の改善」については、自分だけを特別扱い、顧客の声を吸い上げる仕組み
、全てのチャネルで一貫したサービスが求められると説き、DBの統合管理、チャネルへの情報配信、
FSP(ロイヤルティ・プログラム)、データ解析、活用を提示した。

英国TESCOのオムニチャネルへの取り組み


実際にこれらの問題の解決事例として英国TESCOのオムニチャネルへの取り組みを紹介しました。
TESCO社は売上高724億ポンド日本円にして9兆1224億円の小売業で、世界12カ国で6,700以上の
店舗を運営、従業員数53万人の巨大なグローバル企業です。


このTESCO社のオムニチャネル戦略は、「TESCO Club Card」を中心とした個客別マーケテイング
戦略を打ち出しておりこのカードによって、店舗、ネットスーパー、オンラインショップ、モバイルサイト、
SUB CLUB(Baby Club、Wine CLub)、SNS、TESCO Bankといった様々なものとなつながり
ができるのです。


そしてTESCO社はこのカードを「お客様にありがとうと言うためのツール」として位置付けており
お客様に対してどんな小さな手助けでも行っていて、同社にとって「ロイヤルティーのあるお客様へのお礼」
として商品券、クーポン券、適切なDM等を提供している。

その他の事例


次の事例は、米国のスーパーマーケット・チェーンであるSafeway社はクラブカード「just for U」に
よるロイヤルティ・マーケテイングです。
このカードではデジタルクーポン、クラブスペシャル、パーソナライズド・ディール、セービング・リストと呼ばれる
様々なサービスを個人の顧客ごとに提供しています。


次の事例は、インドの銀行であるHDFC銀行のマルチチャネルオファーで、そのオファーの代表が
ATMの画面やクーポンメール、オンラインバンキングであるそうです。


ちなみにインドではATMで現金を引き出している間に駐車している車が盗まれたりするので
できるだけ素早く現金の引出ができるように、カードを挿入すると個人名と共にいつも引き出す金額が初期表示される
というインドならではの仕組みもあると言います。


最後の事例は、米国の銀行であるWells Fargo銀行の小型軽量化店舗「Neighborhood bank」です。
これは行員が店舗にいない銀行で、窓口をなくし、店舗デザインはまわりの雰囲気に合わせて統一し、
フル機能の24h稼働ATMを配置しています。また何かあった場合、少数の行員がタブレット端末で顧客サポート
を行うのだそうです。

最後に


最後に諸星社長は、「企業とは消費者にとってチャネルが異なっても一つの企業なのだ。」と言い、「企業は
全てのチャネルからシームレスなアプローチで顧客体験の改善が必要!」と結んだ。