ITエグゼクティブ・フォーラム IT JAPAN 2013 Vol.21

日本企業の新しい勝ちパターン 早稲田大学ビジネススクール 内田 和成教授


「あまり日本の国に期待しない方が良い。海外や企業で見聞きした内容によると
今までの日本企業の勝ちパターンが通用しなくなっている。
先ずは、個人と企業が強くならなければならない。」と内田教授は強調した。

1年半ほど前に訪れた上海にあるメーカーの経営者と話をしたところ
「我々の経営課題は製造の空洞化である」という。
従業員は上海まで来なくても住み慣れた近くの工場で働くことができるようになったそうだ。
このため賃金が上昇しコストが上がることになった。
そして低賃金のバングラディッシュなどへ生産拠点が流出するのだという。

勝ちパターンを模索するうえでのヒント オークランド・アスレチックス


日本企業がアメリカ型でもなく新興国型でもない新たな勝ちパターンを模索する
うえでヒントとなるとしてあげた事例が米大リーグのオークランド・アスレチックスだ。
ブラッド・ピットが主演した映画「マネーボール」で脚光を浴びたゼネラルマネージャーの
ビリー・ビーン氏が行った手法が参考にできるのではないかという。

まず、ヤンキースと同じような戦いはできないと自覚したことでしょう。
ヤンキースを真似していた時代は強くなることができなかったのです。
ヤンキースはお金を回してスター選手を獲得することで、勝ちパターンを作っていました。
アスレチックスはヤンキースを真似せずにセイバーメトリックスという野球データの分析手法を使いチームの得点が
何によってもたらされるかを分析したのでした。
そして導き出された一番の答えが出塁率であったそうです。
その出塁率を基準にスター性のない選手をドラフトでとるようにしたのでした。

その結果としてア・リーグの優勝争いができるチームへとなっていったのだといいます。
お金がないところがお金のあるところと同じやり方をしていたのでは勝ち目がないということなのです。
一つの戦い方に固執するのではなく「各社が個性を持った戦い方をしなければならないのだ。」と内田教授は語った。

建機のコマツの事例


次のヒントとなる事例は建機のコマツをあげました。
コマツが開発したKOMTRAX(コムトラックス)というITサービスある。
仕組みは、GPSと各種センサーで建機の位置情報を収集が可能で、現在位置、稼働時間や稼働状況、
燃料残量、故障情報などがわかる仕組みとなっている。

もともとは盗難防止のためのシステムであったのだが情報収集ツールとしてだけでなく
マーケティングツールとしてつかったのだ。
これは建機シェア№1であるキャタピラー社に対抗するための武器にもなったのです。
キャタピラー社は建機が故障した際、24時間以内にどこへでも行って対応する
という事後対応を以下に迅速にするかを掲げていたのだ。

一方コマツは、故障する前にこちらから適切に対応できることで、メンテナンスの
顧客満足度を高めたというのだ。
どちらが良いというわけではないのだが、他者とは違う戦い方をすることで
別の価値観を生み出し差別化が行えるのだと内田教授はいう

自転車部品のシマノの事例


次のヒントとなる事例は自転車部品のシマノをあげていました。
シマノは最終商品を作っていない部品製造メーカーであるそうです。

しかし、世界的に7割のマーケットシェアを持っている会社なのです。
その秘密は、部品をコンポーネント化したことによるものであると説明していました。

シマノは部品をコンポーネント化することで最高のパホーマンスを実現することを
レースなどで示したのでした。
また企業として毎年ロードマップをアナウンスすることもおこたらず。
それに自転車業界が追従する形になっているというのです。

KUMONグループの事例


次のヒントとなる事例はKUMONグループである。
KUMONは48の国と地域で合計学習者数は434万人とグローバルな企業である。
日本の学習者数は200万人で約半分の数をしめているものの
サービス業としてはグローバルで成功を収めている珍しい企業なのである。
サービス業としてのグローバル化が難しいというのは各々文化が違うためカルチャーフィットがうまくできないのだという。

そこをクリアした理由の一つが「母親心は世界共通」ということで海外では特に指導者も母親を多く採用しているとのことです。
また、指導者は指導にあたり問題用紙を配るだけでなく一人一人に
問題をカスタマイズしていて、常に問題をアップデートして教材を進化させているとのことです。
これは、生徒?指導者?日本本社が三位一体となって教材の進化に努めているということなのです。

イノベーションを起こした事例


国内にもチャンスはあると内田教授はいう。
現状の成長企業のほとんどは、成熟業界からうまれていると。


それは成熟業界ではすでに思考が停止してしまっているためである。
そこでイノベーションを起こすことができれば右肩上がりの成長が見込めるというのだ。

このイノベーションを起こした事例としてガリバーインターナショナルを例にあげた。
それまで、中古車業界は売ることが商売であったのだが、ガリバーはそこに
買うことによって儲けるビジネスモデルを構築したのだ。
買い取った商品は一定期間内にオークションで売り、在庫リスクを抑えることに成功したのだ。れによってガリバーは従来の中古車業界とは全く違うやり方で成長したのだ。

最後に


次はユニクロとシマムラの比較についての話です。両社ともファッション業界でありながら共に成長をしてる企業なのである。
これは、違うビジネスモデルが共存できている事例であるとのことだ。以下に各々のビジネスモデルについて比較をしてみる。


ユニクロ
・人が集まる場所に出店している。
・ベーシックで流行性の低い物。
シマムラ
・地方を中心に出店している。
・流行物、女子中学生、主婦向けファッション

次はファストフード業界におけるマクドナルドとロッテリアとモスバーガー事例になります。
シェアの比較として25年前と現在の%を以下に表します。


     25年前 ⇒ 現在
マクドナルド 50%⇒75%
ロッテリア   22%⇒ 5%
モスバーガー  1%⇒14%


注目すべきはロッテリアであるこれはマクドナルドと同じ戦略をとり
規模、ブランドで勝負をして負けてしまった結果なのです。
一方モスバーガーも多少はシェアを減らしましたが、2等地戦略、オーダーを受けてから作る等
待たされても出来たてで勝負するという戦略の差別化を行った結果ある程度のシェアを死守できたのでした。


最後に内田教授は、おこぼれ頂戴という、業界2位、3位、4位でいいという発想はもう通じないという。
「競合他社とは違うビジネスモデルで戦うことこそが日本の勝ちパターンになる。」と結んだ。