ITエグゼクティブ・フォーラム IT JAPAN 2013 Vol.6

超「成熟」社会の企業経営 by 谷川史郎氏


野村総合研究所 取締役専務執行役員 コンサルティング関連管掌 兼 未来創発センター長 谷川史郎氏による講演です。


現状が成熟社会であるならば成熟の先はどうなるのでしょうか?
言葉で言うと爛熟という表現になります。
成熟の先にある社会をどう考えて行くのか、
その為に今の時代を構成する「技術革新」、「長寿社会」、「透明性」の3つの分野で変化があると谷川氏は語りました。


これから2030年ころまでは技術革新の端境期と呼ばれており、大企業が必ずしも優位ではないと言っていました。
現時点で認知されている以下の技術革新が確立するのには、2030年以降になるとの見方があるためだそうです。
 ・海底資源の活用
 ・脳科学
 ・家庭内ロボット
 ・再生医療


また長寿社会となり死亡保険よりも介護保険が重要となり、人生は一回限りだが、2毛作・3毛作のよう多様な生き様を
許容する時代になってきたとも言いました。


そして最後に透明性については、
「番号制度などの時代、流行にあわせて人と同じことをすることに、価値がなくなりました。
こうした中で、インターネットを使った人間関係を強く結ぶことに価値が移っています。


これからは多くの革新者を排出する必要があり、それはサービスの本質が根底から変わることを意味するのだ」
と谷川氏は語りました。


谷川氏は革新者が起こす変革が以下のようなものだと言っています。


 ・現状では、商品の付加価値に重きを置いているが、今後はそれがコミュニケーションの付加価値となる。
 ・量販(浅く広く)は質販(個を深く)となる。
 ・死に筋排除はロングテール(販売機会の少ない商品でもアイテム数を幅広く取りそろえること)となる。
 ・占有は共有へと変えて行くものである。


またこれからの10年が日本の将来を決める最後のチャンスであるとも言っていました。
そして革新者とは、具体的にどのような人たちのことを言うのかを話し始めました。


賃貸住宅の空き室率が上がってきている昨今、不動産業を始めている人がいるとすると、
それは増えるものに着眼する人であります。
問題解決をするのではなく、本当のWantsを満たす思考なのです。
それは「自分たちは着眼したものに対して何ができるかを考えることである。」いうことです。


具体例として今の日本で起こっていること、また増えているものに着眼すると以下のようなものが見えてきます。


 ・老朽化した中古の住宅
 ・ペットを飼う人々と離別の悲しみ
 ・正規雇用の機会に恵まれない人
 ・買い物難民
 ・コミュニティーに溶け込めない定年退職男性
 ・いつまでも健康を維持したい高齢者
 ・新たな発見や感動を求める人
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そしてその着眼点から始まった4つの事例の紹介をしてくれました。


【1】金融業分野


保険は、事故を減らすことに貢献できないのか?
というコンセプトを元にアニコムのペット保険事業について紹介しました。


現状、日本ではペットを飼っている人の3%しかペット保険に加入していないです。
単純比較はできませんが、イギリスでは20%の加入率でありそこをめざしているとのことでした。


インターネットでの契約のためコールセンターの配置が必須となります。
通常の企業では、コールセンターでの対応はなるべく短時間で済ます方が効率が良いとされていますが
アニコムではコールセンターでの長電話を推奨しているとのことです。
また生命線であるコールセンターを社長以下全員が担当することになっています。
これによって顧客との信頼関係を深めて行くということなのです。


その結果、2割のお客様が企業にコミュニケーションを求めているということがわかりました。
そしてこの2割のお客様が、新しいお客様を紹介してくださっているとのことでした。


他の金融分野でも変化の兆しがあるとのことで、例えば
 ・「強い会社」より「いい会社」へ投資するファンド
 ・保険会社が指定した道(ナビで安全な経路指示)を走ることで保険料が安くなる等を紹介しました。


【2】流通小売り業分野


「量販」から「質販」へということで大森にあるダイシン百貨店についての紹介をしていました。


ここは超地域密着型を目指しており、その地域内で送迎バスが一日に何便もでており
お年寄りに対しても非常にやさしい事業を運営しているということです。


その結果、営業日のすべてである364日来場するお客様が200人いるといいます。
それは店員と顧客のコミュニケーションを大事にしているということなのだそうです。


アイテム数が18万点。
刺身4切れ、豚肉40gの少量からの購入が可能。
売り場責任者による商品発注が行われ売り損じが少ない。
という多品種少量売りといった顧客の本当のニーズにあわせたサービスを提供しているのです。


【3】製造業分野


中小企業のネットワークでロボットを開発
ネットワークすることでまったく新しい物を開発して行くという事例を紹介しました。


【4】農業分野


高付加価値への挑戦ということで様々な試みが行われているそうです。
ここ20年で農業生産額が3割減少し、所得が低いため農業就業人口の減少と高齢化も進んでいます。


ここで紹介されたのが「白銀のマンゴー」です。
これは12月に出荷を行う完熟マンゴーで、宮崎でも12月出荷のマンゴーを作ろうとしたができなかったのです。
そこで北海道の雪と温泉を利用してそれを作ることに成功したのだとのことでした。


次に紹介されたのが枝豆でした。
「枝豆の最大市場は首都圏」であるとのことで枝豆の美味しさを決める重要な要素が「鮮度」であるため
枝豆は首都圏近郊で栽培されているそうなのです。


北海道の枝豆農家が首都圏近郊の枝豆農家に勝つために行ったこととは、
鮮度では勝てないので、冷凍の技術を取り込んで通年出荷で勝負をしたのでした。
また冷凍することによって海外にも輸出が可能になったそうです。
すると中国でコピー商品が出ることになりましたが
品質が全然上であるため逆に宣伝効果になったとのことでした。


また大企業により加速化される農業技術の紹介がされました。
ブリジストン、横浜ゴムではロシア産のタンポポの栽培を行っているそうです。


ゴムの木は現在アマゾンのジャングルが伐採されつくられているそうで、
このため環境破壊が広がっているのだそうです。
ロシア産のたんぽぽの根が生ゴムに近い原料となることを発見し
ゴムの木の代替えとして栽培をおこなっているとのことでした。


そのほかトヨタ自動車、NTTドコモ、JR東、三井物産、野村証券なども
農業分野への参入をきめているとのことです。


また最後に谷川氏が「少子化は必ずしも前提ではない。」と言っていたのが印象に残りました。
出生率が低いのであれば高くなるようにして行けば良いと言っていたのです。


確かに本気をだせばもっと出生率を上げることも可能であるはずだと思います。
竹中氏も言っていましたが人口の多い国がこれからの経済を牽引してゆくのですから
経済の立て直しのためにも成熟の次のステップの為にも
政府はもっと本腰を入れて少子化対策を行うべきと思いました。